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違法風俗店の知られざる実態 1万7千人の“好み”をデータ管理(産経新聞)

【衝撃事件の核心】

 「ここまで徹底してシステム化された違法風俗店は見たことがない」。大阪、奈良、兵庫3府県で複数の無店舗型性風俗店(デリバリーヘルス)を経営していた金正一被告(56)=韓国籍、売春防止法違反罪で公判中=らが売春防止法違反(契約)の疑いで奈良県警に逮捕、起訴された。住所や電話番号、好みの女性のタイプ…。捜査員をうならせたのは、約1万7千人の顧客男性のデータ管理だった。金被告らはパソコンに蓄積したこれらのデータを駆使し、巧妙な営業、宣伝戦略で約4年間で13億6800万円もの売り上げを得ていた。(永原慎吾)

 ■店を変えても…

 端緒をつかんだのは、奈良県警のサイバーパトロールだった。インターネット犯罪を監視中に、売春をにおわす性風俗店の広告を発見。内偵捜査により違法行為が確認され、昨年11月、携帯電話の出会い系サイトで売春目的で男性客を募ったとして、売春防止法違反(周旋目的誘因)の疑いで、無店舗型性風俗店を運営する「オフィス松本」経営、金被告を逮捕した。

 さらに今年1月には、金被告が従業員の大阪府寝屋川市高宮、松本剛拓(26)と大阪府豊中市山ノ上町、西村顕(39)両被告と共謀し、20年以降、大阪市都島区と神戸市中央区の事務所で、22〜30歳の女性に売春をさせる契約をしたとして再逮捕され、奈良地検が2月1日に売春防止法違反(契約)罪で追起訴。従業員2人も起訴された。

 捜査関係者によると、金被告が豊中市の自宅を拠点に、オフィス松本を立ち上げたのは平成17年10月。その後、兵庫県や奈良県などにも事務所を開設して進出。「シークレットサービス」「ロイヤルファミリー」「ヒルズクラブ」「ルージュ」などの複数の店舗名で男性客を集めていた。

 使い分けていた店舗名は、3府県で計16あったという。捜査関係者は「複数の店舗名を使用していたのは、一度ついた顧客を逃さないためのシステムだ」と分析する。

 金被告らはこれらの店舗名でスポーツ紙やインターネットなどに広告を掲載。風俗店を“はしご”する男性客を逃さないための工夫で、客たちは店を変えたつもりでも、実際は、同じオフィス松本から女性従業員が派遣されていたというわけだ。

 ■スリーサイズやジャンルも記載

 オフィス松本の特徴は徹底したデータ管理だったという。

 県警が押収した女性従業員の名簿には、学生や会社員、飲食店従業員、病院関係者やダンスのインストラクターなどさまざまな職種の18〜33歳までの女性の詳細なデータが記載されていた。ほとんどが副業として働いていたとされる。いずれも容姿がよく、「人気の秘密だったのでは」(捜査関係者)という。

 女性従業員のデータには、源氏名や年齢、スリーサイズに加えて、「セレブ」「OL」「人妻」などの“ジャンル”も記載。客からの電話を受け付けるフロント従業員は、これらのデータを参考にして、派遣する女性従業員を選んでいた。常連の男性客に同じ女性従業員が派遣されるダブりの防止にも役立てていたとされる。

 金被告らは加えて、男性の顧客名簿も作成。名簿には約1万7千人のデータが記載されていた。名前や電話番号のほか、利用したホテル名や好みの女性のタイプまで調査し、管理していた。どの店舗名で予約をしたのかも分かるように工夫をしていたとされる。

 ■高額でも人気

 金被告らは宣伝でも戦略的だった。店舗名ごとに、ホームページかスポーツ紙か利用する広告媒体を分けていたのだ。「店ごとの利用される回数で、どのメディアを利用して宣伝するのが効果的なのかを分析していたのではないか。これほど、データ管理を徹底し、重視した違法営業の風俗店は珍しい。全国的にもまれではないか」と捜査関係者も舌を巻く。

 宣伝内容にも力を入れ、金被告らの逮捕後に電話がつながらなくなった店舗のホームページを開くと、女性従業員のコメント付きの写真がずらり。出会い系サイトなどにも広告を載せ、買春行為ができるとほのめかす内容にするなどして、男性客の関心を集めていたという。

 県警は「利用料が1時間2万2千円〜3万6千円と業界では安価だったため、客を引きつけたのではないか」とみているが、大阪などで取材をしている風俗ライターの男性は「1時間で2万円以上はむしろ高額。大阪では1万円台で買春できる店ははいて捨てるほどある。むしろ、この料金で1万人以上の顧客を抱えていた点に、巧妙な戦略が功を奏していたことがうかがえる」と驚く。

 巧みな営業、宣伝戦略によって、年間で3〜4億円、4年間で13億6800万円を売り上げたオフィス松本。しかし、皮肉にもその宣伝によって、県警に違法営業の実態を知られることになってしまった。

 ■消えた売り上げ

 県警の調べに対し、金被告は「風俗店を開いてから、税金は払っていない」などと話しているといい、脱税の疑惑も浮上している。

 さらに、県警によると、金被告の個人口座には、1千万円程度の残高しか残されていなかったという。県警は、オフィス松本は暴力団の資金源で、風俗店での巨額の利益が組織の活動資金として流用されていた可能性があるとみている。

 金被告は、県警の調べに対し、「売上金は全部使った。高級車を買った」などと供述しているとされるが、捜査関係者は「13億6800万円もの金がほとんど残されていないことは不自然。女性従業員らに人件費がかかったとしても、数億円もの大金がこつ然と消えてしまったことになる」と指摘。不透明な資金の流れを解明する方針という。

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青山裕治
by vtetkeriaj | 2010-03-03 11:52
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